“ウツ”の責任論について

Mental Disorder
11 /22 2012
 「うつ」と言っても、情報が溢れかえる今の世の中において、厳密な意味での「うつ」という病がどこまで正確に把握されているか、非常に気になることである。

たぶん、「うつ≒大うつ状態」というのが、世の中の認識ではないかな、と筆者は思う。ただ「大うつ状態」を呈する精神疾患は、うつ病だけではない。おおよそ、精神疾患と呼ばれる病には、ほとんど認められるといっても過言ではないだろう。

 そこで、今回は「大うつ状態」となったうつ病(単極性障害)と躁うつ病(双極性障害)に的を絞って議論したいと思う。また、世間一般の呼び方を使うように大うつ状態をここでは、“ウツ”とカタカナで表記していきたい。

 さて、この2種類の精神疾患は、DSM-Ⅳの分類では、気分障害にまとめられている。しかし、この2つは、似て非なる病気である。それは、病前性格や治療法(投薬の種類)が異なるからである。また、発症要因に関しても、若干異なる。まだ、不明確な部分も多いが、うつ病は、おもに下記の2つを発症要因とする。

 ①.外因的要因:家庭環境や職場環境など患者を取り巻く環境のこと
 ②.身体因的要因:脳内の神経伝達物質の分泌異常

 一方、躁うつ病の主な発症原因は下記の3つである。

 ①.外因的要因:家庭環境や職場環境など患者を取り巻く環境のこと
 ②.身体因的要因:脳内の神経伝達物質の分泌異常
 ③.内因的要因:父母や祖父母からの遺伝など

 だが、躁うつ病の発症は、多くがウツから始まるので、初期の病相はほとんど一緒であると言える。ただ、だが、躁うつ病の場合は、ウツから躁状態になった時、周りは治ったと判断してしまう。そして、適切な治療を受けないまま、躁とウツを繰り返していく。だから、40代に気持ちの落ち込みが著しいとばかりに受診してみると、双極性障害の場合は「実は再発でした」というパターンも結構ある。

 話が横道にそれた。では、ウツの再発でもいいし、発症でもいいが、ともかく心療内科や精神科に受診するとなると、これは相当勇気がいる。なぜなら、ウツは心の弱い人がかかるとか、気合いが足りないとか、責任感がないとか、いう冷たい視線があるからだ。

 「ウツなんて、心の風邪でしょ」といかにもウツの全てを知り尽くしたような顔で、軽く受け流す傾向はかなりある。とくもかくも「自己責任じゃないか、責任感なさすぎる!」という話がまるで常識でもあるかのように、普通にまかり通っている。筆者も、まさにそのような罵声を受け、非常に参っている。

 まあ、再発にせよ、発症にせよ、先に挙げた①の外因的要因というのがある以上、すなわち、うまくストレスを消化できなかったという部分においては、確かに筆者も含め、患者に責任が全くないとは言えないとだろう。

 だが、患者本人の責任の度合いを考えた場合、例えば交通事故のように、客観的に数値化することは不可能である。何より、ウツになるということの症状においては、自己責任を引き合いに出すこと自体、かなり無茶だと思う。

 ウツの偏見や差別があるため、患者は孤立しやすい。また、うつ病の場合でも、発症年齢のピークが40代であることを考えると、患者の両親は、60代ないし70代であると想像される。妻や子供から見放され、両親にすら頼ることが出来ない状況となる可能性は高く、孤立化しやすい。

 躁うつ病に至っては、躁ないし軽躁状態の行動が「我儘」と「無責任」などと周囲から。すでに見放される可能性があり、鬱転すれば「いまさら面倒見ろなんて言うな」とばかりに三下り半を突きつけられるなど、うつ病に比べて、孤立するリスクは高い。

 ウツという恐るべき状態は、はっきり言って経験者にしか分からない。身も心も疲弊しきった状態である。正常な判断はできないし、もう死にたいと思う事もしばしば。夜は眠れないし、ただひたすら、不安と焦燥感だけが湧き上がる。もう筆舌しがたい苦痛だ。

 そんな状況の中、必死の思いでどうすればいいかを考え、もしかしたらという思いと、それを否定する心の葛藤を打ち破り、なんとか、心療内科や精神科へとたどり着く。何より、心療内科や精神科への抵抗感は、患者本人にも強いはずだ。受診するという最初のプロセスですら、ウツになった人には相当のパワーを必要とする。

 そういう人に責任をとらせること事態、相当な無茶ではないだろうか。かりに、ウツではなく、糖尿病や癌などの身体的な病気であれば、病室におしかけて、責任の所在などを問い詰める人は、少なくとも良識ある人間であれば、しないと思う。

 ウツだって同じだ。身も心も疲弊しきって、もう動けないほどの状態なのだ。ウツになりやすい人の病前性格の大半が「良心的」「責任感が強い」「対人関係では衝突を避け、他人に尽くそうとする」ものであることを加味すると、ウツの患者は、強い罪悪感を持ちやすい。少なくとも、誰かのせいにすることはないと思う。

 それに付け込むような責任の押し付けは、結局のところ、患者をよりいっそう追い詰められ、回復どころではなくなる。ウツという病での責任論の展開は、回復を遅らせるだけで、無意味なことであり、療養中の人には望ましいことではない。

 ただ、付け加えていうなら、心療内科ないし精神科を受診するという行為、これこそが、患者に与えられた、唯一の責任の取り方なんだと思う。そういう認識が広がれば、たとえウツを発症しても患者の回復が早まるのだから、社会的損失は今よりずっと小さくなる。気合いや根性では決して治らない、そして、身近な病であるウツに対して、そのような認識を持ってもらいたいと、筆者は強く願うばかりである。

参考記事:「8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示」
      ダイヤモンドオンライン.2008-2009

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クロサワウヅキ

性別:男
年齢:アラフォー

20代前半でForceに目覚める。
その後、SithのDark Lord〝Darth Ruin(Ⅱ)〟を襲名
というStar Warsのコアなファン

なお、メンヘルへの誹謗・中傷は許しません。